こんにちは、住宅設計を手掛けている建築士の丹羽です。
近年、環境に優しい「サステナブル住宅」が多くの関心を集めつつありますが、皆さんはご存知でしょうか。持続可能な社会の実現が言われる今、どんな家をどのようにつくるのか。そして、その家ではどんな暮らし方ができるのかを、一度考えてみましょう。
ここでは、自然素材のこと、エネルギーを使い過ぎない家、大切に永く暮らす、といった視点で「サステナブル住宅」を紐解いてみたいと思います。
サステナブル住宅の3大ポイント
「サステナブル住宅」とは、“ 環境への影響を最小限に抑え、エネルギーを効率よく利用し、快適な生活空間を実現する住まい” と捉えることができるのですが、では、具体的にどのようなポイントが挙げられるでしょうか。
- 環境に配慮した素材
- エネルギー効率の高さ
- 持続可能な進化(長寿命と柔軟性)
では、これら3つのポイントに基づいて、実際に木の家がどのようにサステナブルであるのかを具体的に見ていきましょう。
環境に配慮した素材
サステナブルな家づくりでは、使う素材を大切に選び、環境への影響をなるべく少なくすることが重要です。ですので、木材の選び方にも気を配りますが、まずは地域の環境で育ち馴染んだものを選びたいものです。地元で育った木を使うことは、運ぶ際の環境への負担を減らし、また、地域の産業を元気にする助けにもなります。
木は木材として使うためには、まず乾燥させることが必要です。主な乾燥方法には「自然乾燥」と「人工乾燥」の2種類がありますが、自然乾燥は太陽光や風を使って乾かすエコフレンドリーな方法。これに対して、人工乾燥は短時間で乾かすために石油エネルギーなどを使うので、本当のサステナブルとは少し違うと言えるのかもしれません。
自然乾燥の木材は、その美しさと自然な香りで木の魅力に満ちています。一方、人工乾燥の木材は、乾燥プロセス中に高温に晒してしまうので、木の自然な魅力が失われてしまいます。サステナブルな家づくりでは、環境や健康への配慮から、自然の状態に近い素材の使い方をしたいものです。
また、その他の建材においては、一般にビニールクロスやベニヤフロアー、サイディングなどの化学物質由来の新建材の使用が一般的です。しかし、これに対し、調湿性や蓄熱性などの性能に優れた、土や漆喰、無垢の木のフローリングなどといった自然素材を活用することが望まれます。
これらのことは地球に優しい家作りの一部ですが、このように、自分たちの家が自然とどのような関わりを持っているのかを考える視点を持つことは大切なことだと思います。
一人一人が環境を大切に思う気持ちで家づくりに望むことが、、子どもたちがこの先幸せに暮らせる世界を築くことに繋がるのだと思います。
エネルギー効率を重視したサステナブルな設計
サステナブルな住宅設計で大切なことの一つは、エネルギーを無駄に使わないための工夫です。
その土地の気候風土を読み解き、地形や季節ごとの特徴を活かして、その土地の自然の働きを上手に利用することで、心地よい空間をつくることができます。
例えば季節ごとの風向きを捉え、風をうまく取り入れるように窓の配置をする。これにより、自然の風で涼を得たりスムーズな換気をすることができます。
最近、小さな窓が特徴の家や、軒のない家が増えていますが、そのことが家のエネルギー効率にどのように影響を及ぼすのかを考えてみる必要があります。自然との調和を考えた快適な空間をつくるには、その土地の特性を理解し、その利点を活かすという視点が大切です。
または、吹き抜けによって家全体を繋ぐことによって一階から二階に風を通して通風を図ったり、一つの暖房器具で家中を温められるようにするなど、できるだけ電気を使わずに涼しくしたり暖かくする工夫をすることも重要です。
また他にも、軒の長さは季節ごとの太陽の光の取り入れ方を上手に調節するためにとても重要です。夏には強い日差しを遮って軒先に日陰をつくることで室内を涼しく保ち、冬には低い角度の太陽光を部屋の中まで取り込むことで暖かさを得る。
適切な軒の出は、室内を、夏は涼しく冬は暖かく保ってくれるのです。
このように、サステナブルな住宅設計では、冷暖房設備だけに頼るのではなく、自然の力を上手に活かすことで、エネルギー効率の良い快適な空間づくりをしていきます。自然と調和し季節の変化に馴染んだ設計によって、四季を通して彩り豊かな暮らしの場をつくりたいですね。
持続可能な進化(長寿命と柔軟性)
サステナブルな住宅設計においてもう一つ大切なことは、家が長持ちであること。そして、そのためには、住む人の生活の変化に合わせて調整ができることです。
例えば、子供たちが独立して家を巣立っていった後、空いた部屋を趣味の部屋や書斎など、他の用途に簡単に変えられるような間取りの工夫をしておくなど、少し先々の暮らし方もイメージしておくことも大切です。
また、前のブログにも書いた、伝統的な「木組みの家」は骨組みに金物や接着剤を使わないので、部分的な改造や修理、増改築もしやすく、とても可変性に富んでいます。
暮らしの変化にも柔軟に対応できる家は、壊さずに、できるだけ永く住み続けることで、無駄な費用を使うことなく、ゴミを増やさない家づくりだと言うことができます。
現在、解体費用が高騰しつつあります。特に、合成材料や特殊な建材を使った家は、解体時の廃棄物処理に多額のコストが掛かるようになってきました。
一方で、自然素材を中心に使った家は、解体後の材料回収と再利用がしやすい点が大きな利点です。これは廃棄物の量を減らすことに繋がり、それによって経済的なメリットも生まれます。例えば、解体した木材で新しい家具を作ることができたり、他の場所での建築材料として再利用できたりします。このアプローチは、環境への負荷を減らしながら、将来的にも資源を有効活用する道を開きます。
このように、持続可能な住宅設計では、家全体のライフサイクルを長期的に考え、暮らしの変化に合わせて適応しながら、環境への影響も少なくすることを目指します。
まとめ
サステナブルな住宅設計は、単に環境に優しいだけでなく、将来に渡って社会的、経済的な側面にも配慮したものでなければなりません。長寿命でありながら、その生涯を通じて変化し、適応し、最終的には自然に還ることができる家。それがまさにサステナブルな住宅の姿と言えるでしょう。
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