御供所の家 Ⅱ
明治22年築 リノベーション
- [所在地] 愛知県丹羽郡
- [工事種別] リノベーション・耐震改修
- [構造・規模] 木造2階建て
- [家族構成] 母+夫婦+子供2人
- [竣工日] 2016年7月
明治22年に小牧市内から今の丹羽郡大口町に移築されたという、延べ85坪の伝統構法の家のリノベーションです。
古き良き建物が町から突然姿を消して、とても残念な気持ちになったことは有りませんか?
古くて寒い・・・とか、
間取りが今の生活に合わなくて不便。
地震で壊れてしまうのではないかと心配!
などといった理由から、
“ いっそ、壊して建て直した方が良いのでは・・・? ”
と考えられるケースはとても多いのだと思います。
時代と共に劇的に変化する私達のライフスタイル。今の暮らしに合わなくなってしまった『古い家』。しかし、マイナスなことばかりではなく、きっと『プラスの面』も沢山あるはずです。
先祖から今に繋がる家族の思い出や、使い込まれた味わいと風格。今では再現しにくい伝統の技と美・・・などなど。それらはお金を出して手に入れることができるものでは有りません。
何とか『マイナス面』を解消して、『プラス面』を活かす手立てはないものでしょうか・・・。
そんな思いを巡らしているところに、
“ 代々受け継いできたこの家を、この先もずっと住み継いでいきたいんです! ” と、
そんな思いがメールで届きました。
この古い民家は、1階が53.5坪、2階は31.7坪(小屋裏収納空間)。やや大きめでどっしりとした構えには風格が有り、歴史を感じさせる建物です。
この改修の目的は、現代の生活に合う空間に再構築すること。そして、低い耐震性能を改善し、老朽化で痛んだ部分を改修することです。
外観は、創建当時の雰囲気にできるだけ戻したいと思います。
そして内部は、東側の三間続きの和室はそのまま残し、中央と西側の部分を耐震補強を兼ねながら、間取りをつくり変えて行きます。
これまでの、各室が壁で仕切られた小割りの間取りを改めて、薪ストーブを中心に据えたリビング、ダイニング、書斎コーナー、キッチンが一つの空間として繋がります。
また、全く足りていなかった収納を充実させ、ご主人の書斎をつくり、洗面室や浴室、トイレも明るく暖かい空間につくり変えて行きます。
そして、塞がれて使われていなかった『つし』(屋根裏の物置空間)を子供室として活かします。
曲がりくねった、煤けた丸太の梁が表しになった、ちょっと愉しげな部屋になるはずです
かつての建築構法は玉石の上に柱を立てる『石端建て』。もちろんこの家もコンクリートの基礎は無く、石の上に建っています。これは大きな地震力を受け流す効果が期待できるとされ、最近、見直す声が高まる構法でもあります。
ただ、一般的な『壁量計算』では、その構造強度を適正に評価できないことが問題でした。
「伝統構法の良さを、是非、数値で明らかにしてみたい!」
そこで今回トライしてみたのが『限界耐力計算法』。
この計算法によれば、“木組み土壁石端建て”の粘り強い特徴をちゃんと評価することができます。
これで自信を持って、伝統構法の建物のリノベーションができます。
ここまで約120年もの永い間ご家族の生活を守ってきた建物ですが、新しいエネルギーを吹き込むことで、さらに永く、代々住み継いでいかれる事でしょう。
伝統の技に新たな感性を載せ、古くて新しい家が誕生しました。