想いのこもった家を受け継ぐ
穏静庵
- [竣工日] 2022年3月
- [坪数] 32.6坪
- [工事種別] 耐震改修・修繕
- [構造・規模] 平家建て、一部二階建て
- [所在地] 名古屋市瑞穂区
今から90年ほど前の昭和9年に、家主Kさんの祖父が曽祖母の為にこの家を建てられました。
そんな、先代の温かい想いが込められたこの家に、Kさんは子供の頃から特別な魅力を感じていらっしゃったそうです。
“ いつも私のことも守ってくれているようでした” と話されます。
家と四季折々の色香を放つお庭とが呼応した空気感が静かに心を癒してくれる。そんな空間を、多くの方にも共有していただける場として、大切に受け継いでいこうとかたく決意されました。
建物の状態は比較的良好で、柱が傾いたり床が下がったりした状況は見受けられませんでした。
しかし、増築された洋間との繋ぎ目に雨漏りが見られ、その部分が酷く腐食していたこと。そもそも、建物全体に耐力壁が少ないために耐震性能が非常に低いとの耐震診断の結果を受けて、今回の改修のご相談を頂きました。
この改修の第一目的は、耐震性能を現在の基準レベルまで上げること。(名古屋市木造住宅耐震改修助成制度を利用)そして、老朽化した電気配線や給排水設備をリニューアルすることです。
傷んだ土壁を塗り直したり、新たに土壁の耐震壁を増設しました。また、基礎を一部増設したり、屋根裏の梁を補強するなど、間取りや空間の趣をできるだけ変えることのないように配慮しながら計画いたしました。
木造軸組構法の家の特徴は、傷んだ箇所を取り替えたり、新たに構造補強をするなどの改修工事がしやすいところです。
築後90年経ったこの家は、こうして大工や左官たち職人の手仕事によって見事に息を吹き返しました。
きっと、この先100年をも超えて、沢山の人たちを癒やし続けてくれることでしょうね。

アプローチ
既存の石積み土留めの一部を改修してアプローチをつくりました。

ポーチ
根本が腐ってしまった柱を入れ替え、格子建具を作り直してかつての雰囲気を再現しました。

ポーチから玄関をみる

玄関
自然素材を活かしてつくられた家は時を経てこその味わいがあります。奥に見える障子は茶席へ繋がります。

座敷
左官壁は小牧土の水ゴネ仕上げとしました。襖紙や障子紙を貼り替え、藁本床畳に入れ替えました。

座敷から前庭をみる
右手の壁は耐震要素として新しく追加した土壁です。耐力壁をバランスよく配置することが大切です。

縁側
お庭が揺らいで見える古いガラスがはまった格子戸をそのまま残しました。

無双
縁側の格子戸の上部には無双が設えてあります。風通しを考えられた先人の知恵です。

次の間から座敷をみる
およそ90年の月日が経ち、現代の耐震性能を満たしつつ、趣のある家に蘇りました。

次の間

茶席
壁は黄土水ゴネ仕上げ。この部屋は雨漏りによって酷く痛んでいましたが、部分的に修繕できるのが木造建築の良いところです。

畳の間
平家の建物に増築された二階建て洋館部分の一階。丸い窓などの意匠を残して壁を塗り直しました。

予備室

洗面コーナー
白いタイルと陶器が当時の雰囲気を醸し出しています。

浴室
比較的状態がよく、タイルなどの雰囲気も魅力的でしたので、手を加えず当時のままにしておきました。
改修前








プラン
