こんにちは、住宅設計を手掛けている建築士の丹羽です。
家選びは一生に一度の一大事業。一口に「木造住宅」と言っても、そのデザインも工法も様々。まず何から考えていったら良いのか悩んでしまいますよね。
そこで今回は、木造の工法にはどんな種類があるのかをお話しいたします。そしてその中でも、特に丹羽明人アトリエが採用している伝統工法の「木組み」の特徴と魅力についてお伝えしたいと思います。ぜひ参考にしていただけたらと思います。
木造にはどんな工法があるの?
主な工法としては「在来軸組工法」「ツーバーフォー工法」「伝統工法」などがあります。
まず初めに、「在来軸組工法」とは、柱と梁を組んでつくった骨組みに、筋交や構造用合板による耐力壁を組み込んでつくるもので、接合部にはボルトやプレート金物を使う工法です。戦後の高度経済成長期の住宅量産政策に対応するように考えられた工法です。増改築など、後々のリフォームにも対応しやすい工法と言われています。
次に「ツーバーフォー工法」は、外国産材の2×4材とベニヤ板でパネルを作り、それを組み合わせて壁や床、屋根を構成します。アメリカから輸入された工法です。
そして最後に「伝統工法」とは、地震が多い日本で永い歴史の中で培われてきた工法です。木のしなやかで粘り強い性質を活かすことで、わずかに変形しながら揺れを吸収して受け流すように働き、大きな地震にも倒壊することなく耐えるように考えられた工法です。
接合部にボルトなどの金物は使わず、部材同士を噛み合わせたり、木の楔などで固定して組み上げられる「木組み」の骨組みがその特徴です。
在来軸組工法と同様に可変性が高いので、増改築や模様替えなどにも対応しやすい工法です。
「木組み」とは?
「木組み」はボルトなどの金物を使わず、部材同士を噛み合わせたり、伝統的な「継ぎ手」や「仕口」の部分の「めり込み」や「摩擦」によって地震の力を吸収して受け流すことによって粘り強く地震に耐える工法です。
「木組み」は、木の個性を一本づつ読み解いて活かす技術ですので、プレカットでは不可能です。熟練の大工の手仕事による「手刻み」によってこそ可能な工法です。
では、その「継ぎ手」や「仕口」とは、どのようなものなのでしょうか。写真を見ていただきながらご紹介しましょう。
柱が土台や梁から引き抜かれないように止める。
部材の先端を細めて貫通し、その先に楔を打ち込んで止める。
主に通し柱を挟み込んで梁をつなぎ止める。
直行方向の部材を噛み合わせて止める。
二本の部材を直線状に継ぐ。
こちらの写真は完成した家の「込み栓継ぎ」の部分です。大工さんが丁寧に面取りをしてくれていて、ちょっとしたアクセントにもなっています。
このように、細かいところにも気を配った丁寧な家づくり。それが職人がつくる木組みの家づくりです。
デザイン的にもカッコ良い木組みの架構
木組みの建前を撮った動画。いろんな継ぎ手や仕口で組まれていく様子を見てみてください。
さて、「木」は粘り強さの他、調湿性や香り、木目の綺麗さや肌触りなど、自然素材ならではの良さが満載の素材です。が、自然素材が故に、例えば曲がっていたり節があったり、一本一本が多様で不均一な面もあります。ですので、それを上手く活かすには、巧みな技術と知識が不可欠。そこで頼りになるのが日本の職人であり、大工なのです。
“曲がり” を欠点ではなく魅力として!
山には、このように曲がって育った木が沢山あります。これらはプレカットの機械では加工できない為、チップにされて燃やされてしまうのです。
でも、この曲がった木。実はとても強い力を持っているので、それを活かさなくては勿体ない!
これは樹齢約70年の曲がり材。これを広いリビング空間の屋根を支える太鼓梁として活かします。
曲がった梁は上からの荷重を支える力に優れている為、大きな空間の屋根も楽に支えることができるのです。また加えて、空間デザインのワンポイントにもなっていますよね。
「木組み」+「貫構造」で最強に!
木組みは、木と木を組む「継ぎ手」や「仕口」部分の「めり込み」や「摩擦」によって地震の力を吸収して受け流すことによって、多少の変形をしながらも粘り強く耐える構造です。そこにさらに「通し貫」が備わることで、建物はより一層粘り強くなるのです。
例えば先の地震でも、想定外の大きな揺れによって建物は大きく歪みながらも、全倒壊することなく、生存空間を残して人命を守った事例が多くみられました。
ここまで傾いても倒れて潰れてしまうことのない貫構造の建物
このように、通し貫は名前の通りに柱を貫通して通し、楔でしっかり固定して家全体を一体化させてくれることで、倒壊しない建物になるのです。
実は、この通し貫は土壁の下地の竹木舞の芯でもあるのです。土壁は硬く剛性の高い構造壁ですので、粘り強く柔軟性の高い木組みの骨組みと一体になることで、中レベルの地震には歪むことなく固く。そして、いざ大地震時には、木組みと通し貫の働きで免震的に地震力を受け止めて耐える。そんな懐の深い建物になるのです。
土壁の芯になる竹木舞を編み付けた様子。
竹木舞の両面に荒壁を塗った土壁。
この後、下地の土を塗り重ね、乾燥後に「中塗り仕舞い」、もしくは「ハンダ」で仕上げる。
環境に優しい「木組みの家」
木組みの架構は意匠的にも魅力的ですので隠さずに現し(真壁つくり)にします。ですので構造体が見える状態なため、常に建物の健康状態を把握することができます。そして、万一何か支障があっても直しやすいので助かります。また、金物で固定していないので、建物を分解することも比較的容易です。ですので、ひょっとしたら遠い将来、建物を解体して移築するなどの有効活用につながるかもしれません。
木組みの家は地震に強く、意匠的にもカッコ良いことに加えて、さらに、メンテナンスが良くて可変製も高いので、永く永く住み継ぐことができる「家」になるのです。
「木組みの家」は環境にとても優しい家なのです。
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