父親が家具職人でした。幼い頃から木工場が遊び場で、いつも木の香りに囲まれた毎日でした。
今の仕事を選んだのは、自然の流れなのかもしれませんね。
幼い頃の自分の家の思い出といえば、暗い廊下の先の自分の部屋が寒くて寂しくて…。
それより家族の近くにいたくて、みんなのいる居間でいつも宿題をしていたことを思い出します。
そんな自分の体験が、今の家づくりの考え方の根底にあるような気がします。
いつも家族全員が「つながり」と「気配」を感じられる家にしたい。子供部屋にはベットや棚などの必要なものだけを置く、コンパクトで楽しげな空間を提案しています。場合によっては1階の居間を見下ろせるようなロフト感覚の空間にすることもあります。私の記憶に有る暗くて長い廊下を無くし、どの部屋もつながっているような家も多数造りました。実はこの方が居住スペースが広くなるため、結果、コンパクトな家にまとめることができて、ローコストにも繋がるんです。
日本人の「平屋に住みたい」という願いは昔も今も変わりませんが、「平屋はコストがかかるから、予算内では小さな家しかできない」という先入観から諦める方がいます。しかし、平屋の桁から片流れ屋根を延長してロフト的な2階を造るなどの工夫で、平屋に近い住み心地の家を造ることは可能なんです。また家を造る際、昔ながらの間取りに縛られている方もいます。かつて日本の家は「冠婚葬祭のための場」でもあったので、客間がもっともいい場所に作られ、広い和室も必要でした。結局50坪あっても、実際毎日使っているのはせいぜい半分くらい。そんな家がまだまだあります。これではやはりもったいない。上手くプランニングすれば、それほど広い面積をとらなくても十分な住まいはできます。コンパクトにさえまとめられれば、予算内でも平屋感覚の家を実現することができます。「家は40坪以上の広さがないとダメ」。たとえば、そんな先入観をなくすことが、理想の家づくりの第一歩かもしれませんね。